【7033_MSOL】★★★★★

今回の企業分析シリーズは、プロジェクトマネジメント実行支援(PMO*1)を中心事業とするコンサルティング会社MSOLです。(2005年創業、2018年上場)

*1 Project Management Officeの略。プロジェクト内には、プロジェクト成功の請負人と呼ばれるプロジェクトマネジャー(以下PM)という役割があるが、PMOはそのPMの意思決定支援を行う役割のこと

 

東証M 情報・通信業

時価総額121億円(2019/9/10時点)

 

■業績の確認

  • 売上は鈍化しているように見えるが、実際は30%ペースで成長(以下後述)
  • 営業利益は前年同期比12%増と増収増益。計画対比でも売上高、利益ともに上振れ
  • PER41倍、PBR8.2倍と割高感あり、ROEは67.5とかなり高い
  • 2018年10月期に採用した人材が収益貢献することで、これまでと同様の増収増益ペースが続く予想

(株探より抜粋)

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売上の伸びが縮まっているのはある理由があります。それは2017年10月期に子会社キタエゾアンドカンパニー(以下K&C)の売上及び利益が含まれているためです。2017年10月24日に全株式を売却しているため、2018年10月期では連結対象外となります。

K&Cを除くと、2017年10月期は売上2,181百万円、営業利益146百万円、経常利益139百万円、純利益84百万円となります。(有価証券報告書から計算)

すると、売上ペースで2,917 / 2,181 = 33.7%の増収、営業利益ベースで324 / 146 =121%の増益となります。

ここから、MSOLは成長が止まることなく続いている企業ということがわかります。

 

①「なに」で稼いでいる?(「事業別」、「地域別」、「顧客別」)

■事業の確認

・事業別で見ると、同社はコンサルティング事業の単一セグメントで事業を展開しています。ここでいうコンサルティング事業は経営トップを支援し全社的な課題を取り扱う「戦略コンサルティング」や、「ITコンサルティング」「人事コンサルティング」などいわゆる「業務コンサルティング」と2分すると、同社のコンサルティング事業は「業務ーITコンサルティング」に分類されるイメージです。

・地域別に見ると、同社は日本国内はもちろんのこと、中国、台湾でも事業を展開している。中国、台湾での売上は不明ですが、売上目標が5億~20億円程度。クライアント数が7社なので、全体の5%程度を占める売上となりそうです。

 

②「なぜ」稼げている?

■市場、ビジネスモデル

ビジネスモデルとしては、典型的な「ストック型」に分類されます。

日本において、PMO支援事業を専門的に展開する企業はほとんどなく、MSOLが唯一の存在となります。つまり独自性の高いビジネスモデルとなります。これをベースとして、人材の豊富さ、15年の実績によって確率されたブランドによって、以下記載するライバルと大きな差を開かせ、競合関係を築かせていないことがわかります。

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■ライバル

ライバルには、大きくコンサルティング企業、SI、事業会社が存在します。

コンサルティング企業に関しては、コンサルタントとしてのキャリアが中心となり、実質的にPMO支援人材が不足していると考えられます。

SIに関しては、コンサルティング企業同様に、エンジニアとしてのキャリアが中心となり、PMOとしての豊富な知識や経験を有する人材は不足していると考えられます。

事業会社に関しては、上述の通りであり、人材不足、かつ今後社内にPMOスタッフを自社で抱えるのも、間接費増となる可能性があるため、考えづらいです。

⇒専門性や人材料、実績で同社が優位性を確保しており、今後もMSOLの地位が揺らぐ可能性は少ない。

 

③今後、稼げる仕組みに変化は?

201910月期の決算発表で中期経営計画の発表を予定しています。創業20周年に当たる202510月時点の企業像をどのように描くのかに期待です。

ただし、2018年10月期の決算資料のタイミングで、既にIPO前後でアウトライン自体はイメージされていたようです。

IPO前は一部上場企業や大企業中心に顧客基盤の拡大を注力し、IPOMSOLの経営基盤が固まったことの象徴っぽいですね。

IPO後は既存事業の拡大、2.既存事業の多角化、3.海外進出、4.ソフトウェアの自社開発及び販売をすることで、さらなる成長を目指す方針です。

 

1.既存事業の拡大については、引き続き同社の特徴を生かして、より一層の成長エンジンを加速させるということです。

 

2.既存事業の多角化については、マネジメントコンサルティングへの進出とシェアードPMOの立ち上げを目指している。

ここでいうマネジメントコンサルティングは、PMO実行支援を後工程とした場合、事業戦略の立案などのより前工程(上流タスク)を指し、PMOソリューションの高度化を図るものと思われる。そしてシェアードPMOは、PMO支援のシェア化(切り売り)を実施し、より効率化を図るものと思われる。

 

3.海外進出、4.ソフトウェアの自社開発及び販売については、別の機会があればまとめます。。。

 

④これから「いくら」稼げるか?

MSOLは現在の日本におけるPMO実行支援の潜在的市場規模は1,400億円程度と推計しています。この中の100~150億円を売り上げたいと決算資料で謳っています。果たして売上高100億円~150億円は現実的な数字なのででしょうか。

 

利益構造は、「一人あたり単価」×「稼働率」×「要員数」となります。

一人あたり月単価を150万円、稼働率を90%と仮定すると、年間売上高は150万円×12ヶ月×90%×800 = 12,960百万と試算されます。つまり、800人体制で100億円の売上規模を狙えるようになるわけです。けっこう現実的な気がしてきましたね。

さらに今後、年間で100人ペースでの人材獲得が進めば、2025年10月期末までに700人+170人=870人の人材獲得が見込まれる。これは我ながら現実的な数値だと思っている。

 

人材獲得については、201989日に東証一部上場への市場変更申請を出しています。これにより知名度を更にアップさせ、採用戦略を前に進められることとなりそうです。

 

それでは。